〇陰謀追及界隈でも原理的考察を重視するタイプの人達によって「黒幕は自らに名を付けない」という指摘がよくなされる。これは原理的に言うと実際その通りである。人間は感覚を含む殆どの認識対象を言語で認識しているので、名称が無いと認識者にとってはその対象の輪郭が不明瞭で曖昧になるからである。
〇感覚の対象ですら言語が介在しないと認識者にとっては存在の輪郭が明瞭にならないのだから、感覚対象ではない「対象」なら名称が無いと殆ど存在しないのも同然となる。だから、ただでさえ人の目に触れない秘密結社に「名前を付けない」なら結社員以外には存在しないも同然=完璧な秘匿になるのである。 〇人間の認識を仮に感覚・表象・思考に大別すると、言語は思考は勿論、感覚や表象にも関わる。言語が無ければ思考ができないのは言うまでもないが、言語が介在しないと感覚や表象ですら明瞭にならない。例えば初めて見る名前を知らない事物は名前を付与する事で認識者にとっての明確な存在性を獲得する。 〇感覚や表象(イメージ)の対象ですら言語を介在して認識する。これを「対象の二肢的二重性」などと言う。感覚的には「丸い赤いすっぱいそれ」を「りんご」として認識する。「羽のある白馬」という表象を「ペガサス」として認識する。このように感覚も表象も言語を伴って認識する「として」構造がある。 〇古代印度哲学では全ての認識対象を「名称と形態(nama rupa)」と表現した。原始仏教もこれを踏襲。言語的対象と感覚的対象。「名称」で言語を代表させ、「形態」即ち視覚像で感覚を代表させたのだと解釈できる。つまり人間の認識対象は全て名称と形態又はそのどちらか片方を必ず持っているという事。 〇秘密結社の隠蔽の話に戻すと、秘密結社は文字通り「秘密」なのでその「形態」(知覚可能な具体的なメンバーやメンバーが集まる場所など)を元から隠している上に、「名称」すら無ければ完全に存在を隠蔽できる訳である。認識者にとっては名称(nama)も形態(rupa)も無いなら存在しないも同然となる。 〇では、黒幕の尻尾を掴む事は不可能か?そうではないと思う。人間には自己顕示欲というものがある。特に権力欲の強い連中程そうである。だから結社の連中が自らの存在を完璧に隠蔽する「禁欲」に耐えられるのか?である。彼らの自己顕示欲が窺われるのが世界中にある各種シンボルやモニュメントである。 〇単なる自己顕示欲でなくとも名称も形態も全て消せば文字通り完全な秘匿にはなるが、それだけでは人々に影響を与える事も出来ないだろう。人々の思考や行動を操るには人々の認識作用に働きかけるしかないからである。だから何らかの形で認識できる姿を現すはずなのである。そこが追及の端緒になり得る。 〇例えば、各種メディア媒体で喧伝される思想やイデオロギー、具体的な名称を持つ各種組織、様々な場面や土地に見られるシンボルなど、我々が直接認識し得る形で何らかの姿を現しているはずなのである。無論、それがそのまま「黒幕」とは断定できないが、それを手がかりに推理・分析する事は可能である。 〇黒幕は「名前を付けない」「名前を隠す」事等でその存在を隠蔽できるが、人々の認識作用(見る聞く考える等。眼耳鼻舌身意)に働きかけないと何の影響も及ぼす事が出来ない以上何らかの形(偽装やダミーも含む)で姿を現すはずなのも確かである。黒幕に迫るには認識可能な事実の分析も疎かにできない。 〇占星術が信じられていた古代の喩えになるが、龍樹は「星の力は直接人に触れる事で影響を及ぼす」という趣旨の比喩を使った。確か「火は闇に到達するのか」という哲学的命題を巡る論争の際の比喩だが、どんなに遠くの存在でも人間に影響を与える以上、その影響力は直接人間に触れているという事である。 〇つまり、どんなに黒幕が我々からかけ離れた存在でも、我々に影響を与えようとする以上我々の眼耳鼻舌身意(認識作用)に触れているはずである。それを手がかりに黒幕を闇から引きずり出す事も可能だと考える。だから観察が大切である。認識可能な事実の観察に基づき推論し分析し、仮説を立て論証する。 〇だから、認識可能な具体的な名前のある裏権力組織(CSIS、石屋、イエズス会など)や勢力(猶太資本家や欧州貴族、ネオコン、シオニスト等)は片っ端から追及する事にしている。それらの総体を「裏権力」「国際秘密力」と仮称する。こうすればどこの誰が黒幕でも「討ち漏らし」がないという考えである。 〇欧米の秘密結社は石屋を見ても分かるように基本的にコスプレ集団で自己アピールが強い。演劇色もある。特殊な衣装や儀式への執着は独特の自己顕示欲の表れと見る事ができる。虚栄心も入会の大きな動機の一つだと思われる。結社員には「隠したいが自己顕示もしたい」という両義的な欲望があると見る。 〇まとめる。確かに黒幕は「名を付けない」「名を隠す」事で自らの存在を完璧に秘匿する事ができると思われる。だが「抑え難い自己顕示欲」と「人々に影響を与える為には何らかの形で人々の認識作用に働きかける必要がある」という事情がある。ここに黒幕を闇から引きずり出す追及の端緒があると考える。 〇裏権力構成メンバーには①黒幕タイプと②教祖タイプがいると分析する。①はある程度名声欲を断念して背後から人を動かす事に喜びを見出すタイプである。②は目立ちたがり屋で人々から公然と崇められる事に喜びを見出すタイプである。後者はカルト教祖は勿論、政治家も含む。傀儡に多いタイプである。 〇黒幕タイプと教祖タイプでは前者の方が正体を掴みにくいのは言うまでもない。後者は放っておいても自己アピールするからである。例えば安倍は自称保守らの「教祖」である。だが、所詮は傀儡に過ぎない。その背後にはCSISら「黒幕」がいる。とは言え、CSISは組織名があるだけまだ分かりやすい方である。 〇認識可能な具体的な組織や勢力、思想、各種工作、シンボル等を分析する事で明確な名すらないかもしれない黒幕に迫る方法を取っている。この場合東洋の先人の探求法は参考になる。唯識は具体的な事物(法)の姿(相)を分析する事で事物の本質(理)に至ろうとした。だから唯識学を「法相学」と言う。 〇「どんなに遠くの存在でも人間に影響を与える以上、その影響力は直接人間に触れている」と書いたが、だからこそ洗脳されるリスクもあるし(以前述べた「心法」は洗脳防御法)、逆に分析して黒幕の正体を暴く事もできるのである。自らの眼耳鼻舌身意という場以外に裏権力との戦いのフィールドは無い。 〇「名称と形態(nama rupa。漢語だと名色)」という範疇で世界を認識した古代印度の哲学者のセンスは凄いと思う。確かにこの範疇であらゆる認識対象を整理する事が可能。整理する事で思考を明晰化する事が出来る。認識対象の属性で「名称」が半分を占めるので名称を欠く事物は認識の死角に入りやすい。 〇秘密結社は社会学的機能としては伝統的共同体が空白だった米国では共同体の代価物という一面があったようだ。逆に、しっかりしたコミュニティや独立心旺盛で「個」を恐れない人には無縁のものである。オカルト=秘教も同様である。何らかの欲望を達成する為の手段としてある。無欲な人には無縁である。 https://twitter.com/kikuchi_8/status/1055868659862663168 (了)
by kokusai_seikei
| 2018-11-11 13:09
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