〇ヒンドゥー教哲学者のシャンカラの不二一元論は「実在はブラフマン即アートマンだけ、他は全て幻影」という思想である。「実在は愛だけ、他は全て幻影」というデイビッド・アイクの思想とそっくりである。アイクは神智学系の陰謀論者と言えるのでバラモン教系の思想の影響を受けていても不思議はない。 〇「実在はブラフマンのみ・世界は幻=マーヤー・世界は実在たるブラフマンの顕現」という思想がヒンドゥー教の主流の形而上学説だそうである。一見、真言密教の大日如来説と似るが、大日如来(=宇宙)は実体ではなく六大という構成要素から成る(=縁起=空)とする点が根本的に違う。縁起説の枠内。 〇ヒンドゥー教では様々な神々を信仰するが、その根本は「ブラフマン」という宇宙原理であって「唯一者」などともされる。この「唯一者」が様々な神の姿を取るとする印度人学者も。この解釈だと汎神論的でありながら、かなり一神教的である。大本教系の万神即一神論のネタ元はこの辺にあるのではと思う。 〇素朴な疑問だが、ブラフマンが変化しない実体ならば、何故様々な存在として顕現できるのか?特定の姿を取るという事は変化するという事であり「不変」と矛盾する。こういう単純な疑問を解決せずに最終的に「信じるしかない」とされるのが形而上学である。なので形而上学的断定を避ける「無記」がよい。 〇モーハン・セーンという印度の学者によると印度文化はアーリア的要素と非アーリア的要素で構成されているそうだ。アーリア的要素は「天上の神々への信仰」「祭式万能主義」「供儀」「厳格な階級制」非アーリア的要素は「不殺生=アヒンサー」「禁欲」「出家遊行」「ヨーガ(瑜伽行)」「先祖崇拝」等。 〇「出家遊行」「禁欲」「不殺生=アヒンサー」「瑜伽行=ヨーガ=印度独特の精神鍛錬法」はインダス文明に由来する非ヴェーダ的な要素だそうだ。ヴェーダはアーリア人の聖典。アーリア文化は結社的価値観と酷似。仏教は非ヴェーダ的文化。この辺に彼らが仏教を嫌い、破壊しようとする淵源がありそうだ。 〇バラモン教(特にウパニシャッドの教え)と仏教では「解脱」を目指す点は共通している。前者は個人原理と宇宙原理の一致=梵我一如を悟る事が「解脱」だとされる。これは信仰や神秘を前提とする。一方、仏教は執着・煩悩を離れる事がそのまま「解脱」だとされる。こちらは信仰や神秘を前提としない。 〇バラモン教と違い仏教が普遍性を持ちえたのは、前者が「ブラフマン」「アートマン」という形而上学的原理を信仰的に受け入れる必要があったのに比べ、後者は「執着を離れると苦しみが消える」という信仰的前提が無くても誰もが確認できる現実の人間の心理的法則に立脚したからではないだろうか。 〇「個人我たるアートマンと宇宙我たるブラフマンを合一させると苦しみが消え解脱が起きる」というのがバラモン教の梵我一如の思想である。一方、仏教では現実の心の中から貪欲や憎悪、傲慢、無知といった「煩悩」をいかに自制して取り除くか、という事が主眼となっており、「合一」は目指されていない。 〇バラモン教ではヴェーダは天上の神が与えた聖典と考える天啓史観である。祭式万能主義であり、厳格な階級制への固執がある。生き物を生贄として殺し、供物として神々に捧げる。この「アーリア的要素」は見れば見る程、西洋の秘密結社員の思想と酷似している。彼らの思想的淵源ではないだろうか。 〇仏教が印度の非アーリア文化の代表であるが、ヒンドゥー教の祖先崇拝の要素もアーリア文化ではなく非アーリア文化に由来するそうだ。アーリア系では祖先崇拝より「天上の神」など形而上学的存在への信仰が優越するという事だろうか。この辺りの傾向性も後の一神教文明や結社員の思想との類縁を感じる。 〇本来の神道では「天上の神」への信仰ではなく祖先崇拝と自然崇拝が基本だった。元々自然環境の中でその都度祭りが行われていた為か儀式も簡素であり、血を不浄として嫌い生贄の供儀はしない。日本では身分秩序は多元的であまり厳格ではなかった。印度の非アーリア的な要素と親和性。神仏習合も頷ける。 〇「印度文化のアーリア的要素と非アーリア的要素」という切り口で考えると、色々見えてくるものがあった。以上その考察をまとめてみた次第である。 https://twitter.com/kikuchi_8/status/733787014735269888 (了)
by kokusai_seikei
| 2016-08-20 07:43
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Comments(3)
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HZ
at 2016-08-22 05:14
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おはようございます、いつも貴重なお話ありがとうございます、
実は知り合いがインドのヒマラヤ聖者の教え、ヨグマタジと言う方に夢中になっております、が先日よくよく話しを聞いた所多分にカルト臭いのです、それもまたオウム真理教近い気がします、ステージがあり、多額のお布施、シヴァ神信仰、かなり没頭しており、心配しています、昔オウムとも繋がりがあった気がしています、
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kokusai_seikei at 2016-08-22 23:32
HZさん、コメントをありがとうございますm(_ _)m
なるほど、お知り合いの方が印度系の精神世界に夢中になっておられるのですね。 神智学系を見ても分かるように、西洋の結社連中やその手先のカルトは印度文化に憑依して利用する事が多いので注意が必要だと思います。近代以降の印度の思想家や行者の中にはワンワールド的な主張をする者も多くて怪しいと思っています。 ステージとは厳格な位階制のようなものでしょうか?結社やカルトの特徴で儀式への固執と並び上意下達の位階秩序への拘りというのがあります。 オウムもシヴァ神崇拝をしていましたね。最近もCERN(欧州原子核研究機構)の中庭にあるシヴァ神像の前で生贄儀式をしている様子とされる動画が世界中に拡散しています。これは一般ニュースにもなりました。シヴァは裏の連中にとって重要な神のようです。元々印度ではシヴァとは宇宙の破壊作用を神格化した神とされていますね。世界の破壊という蛮行を実行する国際秘密力が固執するのも頷けます。印度のヒンドゥー教とは別文脈で「シヴァ」が出てきたら国際秘密力系のカルトの可能性が高いと思います。
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HZ
at 2016-08-23 17:05
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お忙しい中お返事本当にありがとうございます、
色々考えますと、やはり形を変えたオウムなのではとしか言いようが無いのです、ステージ等という言葉自体がオウム特有な言い回し、更に最終解脱というものもあるそうです、修行が地下に空気を遮断し一切下界を遮断してヨグマタジとなるらしいですがこれもオウムに似て、さらに空を飛んだり、無いものを出す奇跡、等ある、ヨグマタというホーリーネームとジというオウムでのグル尊師らしきもの、そしてシヴァ神、ヨグマタジの波動が入った何万円かの水の販売、そして驚きはお弟子達らしき人がすでに波動が入った手当てをして、波動が波動がと有り難く頂いているという現実。唖然としました。今この時期、正に国際秘密力の一員ではないかと思うにいたるのですが。ちなみにさらに上の方らしきパイロットババジという方がおられるそうですが。若い人たちが夢中になって居るのが心配です。 コメントが送れず何度かクリックしてしまい、重ねてコメントが行ってしまっていましたら恐縮です、
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by 菊池 カテゴリ
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