自分なりに考えた「西欧思想のネタ暴きのポイント」について述べたいと思う。西欧思想は複雑な装飾でコケオドシていても、基本の骨組みは単純であり、その骨組みを把握すれば簡単に見抜けると思う。
スピリチュアリズムは西洋神秘主義から派生した。西洋神秘主義の根には古代の新プラトン主義がある。新プラトン主義と言えば「一者」。そして前述の「時は一性(一者)」この様に近代哲学信者とスピ信者が同類だというのは決して誇張ではないことが分かる。一者の観念はキリスト教神学に影響。つまりキリスト教、スピリチュアル、西欧近代哲学は根を同じくする「だんご三兄弟」ならぬ「一者三兄弟」なのである。そしてこの三兄弟は社会組織で言うと、キリスト教会・英国系フリーメイソン・仏蘭西系フリーメイソンにおおよそだが、それぞれ対応する。根を同じくするこれらの分進合撃戦術。 西洋思想は複雑に見えるが案外単純である。同じ基本概念を装いを変えて何千年も使い回しているに過ぎないからだ。その基本概念とは主に二つ。一つは「実体」。もう一つはそこから生まれる二元論である。実体という概念が理解できれば西洋思想は至極単純であることが分かる。実体=自存的な基体。 西洋思想を見抜くポイントは「何に実体を置くか」と「何と何の二元論か」である。この二つのポイントに着目することで西洋のコケオドシの体系はあらかた解剖される。例えば、実体を神に置くのがキリスト教、自我がそこに合一する究極実在に置くのが神秘主義、理性や物自体などに置くのが近代哲学。「時は一性」なんて言うのもその一バージョン。「時」に実体を置いたわけだ。一旦実体が設定されると「実体」とそれ以外の二元論となる(実在と現象など)。実体が複数設定されると実体Aと実体Bの二元論となる(善と悪など)。小難しい表現をしていても西洋思想はかかる基本的枠組みの使い回し。 今まで実体視された概念の具体例を挙げる。「四大」「原子」「イデア」「一者」「造物主」「善と悪」「自我」「理性」「精神と物質」「物自体」「時間」さて、次はどこに置く?どこに於いても大差はないが。「イワシの頭」はどうだろうか?まあ、頑張ってくれ。>西洋人及び脳内西洋人達 「時間の一性」というのは、「リンゴ、みかん、バナナ」等が「果物」という類概念で括れるように、個別存在を貫く最高度の「普遍者」が「時間」という事だろう。全ての存在を包摂する「一=実体」。これは万有をイデアの中のイデアである「一者=ト・ヘン」で括った新プラトン主義の変奏。進歩が無い。これは結局、諸々の個別存在を包括する普遍者を「時間」とし、さらに「一性」とすることで実体視・形而上学化させた、新プラトン主義以来中東以西によくある、ありふれた形而上学の一種。複雑に見える近代哲学は基本の骨格は極めて単純。古代哲学+耶蘇教の変奏でしかないのだ。ネタは簡単に割れる。「時は一性」=アリストテレスの「プロス・ヘン」(一へ向けて)というテーゼの「ヘン」に「時間」を当てた思考。「ヘン」とは一なる実体。多様な存在者を一なる実体で包括するという事。何のことは無い、「時は一性」とは「時は実体」という事であった。新プラトン主義のト・ヘン=一者は究極の実体。 ※神智学教義の三本柱の一つ。明らかに新プラトン主義の流出説の影響を受けている。→「全宇宙の根底には、一つの絶対的で人智を超えた至高の神霊や無限の霊力が存在しており、見えるものも見えないものも含めた万物の根源になっている、という思想。」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E6%99%BA%E5%AD%A6 「〇〇は一性=一者=ト・ヘン」という思想を振りかざす西欧近代哲学信者も「一者」という概念装置を使い回している以上新プラトン主義の後裔。そしてブラヴァッキーの神智学教義の三本柱に明らかな通り、神智学も新プラトン主義の流れ。西欧近代哲学信者とスピ信者が同類というのは誇張ではないのだ。 キリスト教世界で言う「神」と「悪魔」という概念も同じ。「神」と「悪魔」は一対。前述した西洋思想の基本的骨組の①実体を設定②二元論的構図を設定(この場合は実体を複数設定し、その実体Aと実体Bの二元論)という順序で言うと、神・悪魔という二つの実体が設定され、この二つが二元論的に対置される構造。 地中海オリエント・西欧(中東以西と取りあえず呼ぶ)の文明の推移は「神中心→人間中心」という流れである。哲学的に分析すると、「神」に実体を置く世界観から「人間」に実体を置く世界観への遷移である。超越者を実体視しても人間を実体視しても、その帰結は排他独善的な支配と破壊の衝動である。 太田龍氏が「西洋文明の根本は我欲我執」と書いておられたが、本当にその通り。さらに分析すると、この我欲我執は「実体観」から来ている。例えば仏教が実体観を排斥するのは、単なる哲学的関心からではなく、「実体」という観念が必然的に執着を引き起こすからだ。執着は主に貪欲と怒り→支配と破壊。 執着は「実体」という対象へ向けて二方向に発現。対象を引き寄せる方向で行けば「貪欲」に、対象を排除する方向に行けば「瞋恚」(怒り)に。それは実体視を引き起こす「無知」による、とする。貪瞋癡の三毒とは事実を錯認し「実体」を仮構する「癡=無知」を根本とする。実体を執する西洋=癡の文明。 耶蘇教徒や近代哲学信者と話すと分かるが、「実体」に執する者達は自己相対化ができないので、友好的で対等な対話がほぼ不可能である。対等な対話の為には各自の自己相対化が必要だが、それが彼らには不可能なのだ。彼らは実体観への執着が強い程異なる考えの者とは闘争か支配の関係しか構築できない。 という訳で、太田龍氏の言う「西洋文明は我欲我執が根本」という指摘は、実感的にも納得が行くのである。「実体」を一旦立てると、それがどのようなものであれ、執着を引き起こし、闘争や支配の衝動に駆り立て、その貪欲さはとどまるところを知らない。寛容さを失い、他者と共存ができなくなるのだ。 「西洋文明は我欲我執が根本」という太田龍氏の指摘を自分なりに少し突っ込んで分析してみた過程とも絡み、仏教と認識論や科学で少し考えた事があるので次に挙げる。さきほど考察した西洋、もっと言えば地中海オリエント世界以西の根本的思考形式である「実体論」と一応関係する思考だと思う。 仏教では五蘊に依って自己があると説かれる。五蘊=色・受・想・行・識=身体・感受・構想・意志・認識。そして大乗では五蘊は其々相互依存的・相互浸透的=縁起・空だと説かれる。ここには感性=受と知性=識を其々「実体」として立てるが故の「感性と知性の統合」などという偽問題は生じない。禅の六祖慧能の弟子二人がたなびく旗を見て「旗が動く」「いや、風が動く」と問答をした。慧能は其を見て「心が動く」と言った。認識対象は認識主体と相関的であり、「旗」とは厳密に言えば視覚的な知覚与件。従って「旗がたなびく」とはこの知覚与件が動く、という事。「心が動く」は間違っていない。 つまり某哲学者風の言い方をすれば「射映的現相」が動くと。見えた限りでの対象が動く、という事は視覚そのものが動くという事。常に変動する視覚的与件を「旗」という概念で固定化。さらに言語表現して「旗が動く」となる。慧能の弟子は視覚的与件を外部化させて「旗が動く」「風が動く」とやったと。 相対性理論によれば、空間・時間・物質等は全て相互浸透的・相互依存的・相互規定的だとされる。つまり、それらが縁起的に関係し合い四次元世界を形成しているという。華厳の重々無尽の縁起説を思いだす。華厳思想は宗教的ドグマを説くものではなく、一種の世界観モデルを提示するものと捉えている。 (了)
by kokusai_seikei
| 2015-09-14 23:34
| 思想哲学解析
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by 菊池 カテゴリ
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