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明治以降の保守右翼勢力とカルトの関係の素描

日本の保守右翼について新興宗教との関わりから分析してみたい。


日本の保守右翼勢力は新興宗教との関わりで分類すると、戦後的親米保守は戦後右翼の巨頭笹川良一、児玉誉士夫らが引き入れた統一協会の影響が強く、戦前的反米右翼は玄洋社との繋がり以来大本教の影響が強いと見える。雑誌でいうと「正論」派と「月刊日本」派というところか。


戦後右翼と統一協会・勝共連合の関係はもはやかなり暴露されているが、戦前右翼が大本との絡みで語られることはそれほど多くない。しかし玄洋社黒龍会が大本と友好関係にあったのは事実であるし(「国士内田良平」という戦前的民族派の人々が書いた書籍の中の一章で内田らと大本の出口との関わりが肯定的に取り上げられていことでもわか る。)、それより新しい世代いわゆる革新右翼の北、大川、満川の猶存社「三尊」が雁首揃えて出口を綾部に訪問したり、北の著書の出版費用について北と出口が話し合ったという逸話もある(渡部悌治先生の「ユダヤは日本に何をしたか」参照)。また戦前右翼の一方の大立者にしてフリーメイソン運動家であり大本系世界救世教顧問などもしていた堀川辰吉郎の娘を名乗る女性がアセンションの呼号者であるのも興味深い事実であるがそれは今は置いておく。(しかし戦前右翼の大物がフリーメイソンに協賛していたことは重要である)


戦前的右翼としては大本と並んで国柱会的日蓮主義の影響も強いようである。国柱会の教祖である田中智学の息子の里見岸雄の「国体論」はいまだに一部で読まれているようだ。国柱会信者の日蓮主義者の石原完爾の信奉者は今も多い。愛宕先生が書かれていた「狂信日蓮宗の徒」はこのあたりを指すのではな いかと見ている。また戦後の反米の新右翼は大本系の生長の家の青年政治運動から出てきたことも興味深い。さらにその新右翼誕生に影響を与えた三島由起夫は大本幹部をやめて一派を成した友清天行の著書を読んでいたという。生長の家から出た新右翼の指導者鈴木邦男氏(といっても今は左翼と仲がよく老壮会的カオス状態のようであるが)は著書を読む限り里見岸雄の影響もあるようだ。


以上のように国の伝統のエッセンスすなわち国粋を自認する人たちに伝統とは違う極めて西洋的な一神教性と終末観が強い(つまり西洋の援兵でしかない)「統一協会」だの「大本教」だの「生長の家」だの「国柱会」だのの「新興」宗教の 影が見え隠れする現象は大きな謎である。救国を志した揚げ句新興宗教に救いを見出だす軍人も多かった。大本の浅野和三郎の実兄は高級軍人であった。それどころが国際政経学会理事の赤池濃氏までが大本派生団体の矢野祐太郎の神聖龍神会会員であったことは仰天な事実である。戦前愛国勢力の闇も深い。


その全てを直に見聞体験されてきた渡部悌治先生が記されていた「純正愛国陣営と右翼は違う」というお言葉は重い。結局、右翼と左翼はジロンド派とジャコバン派よろしく対の存在でしかないのだろう。いみじくもそのことは他ならぬ右翼の巨頭児玉誉士夫がGHQに提出した供述書で述べている。いわく「右翼とは本質的に左翼に対抗してできたもの」。「だから反米になる事は無いのだ」という米当局へのこび へつらいの言辞である。媚であるとはいえ、右翼は左翼と対であるとわかってやっているなら児玉はCIAエージェントとして確信犯であった。


(了)

by kokusai_seikei | 2012-11-18 02:17 | 陰謀解析 | Trackback | Comments(0)


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